価格と利益の計算室|教室・個人レッスンの採算
体験レッスンの料金設定|無料・割引と継続回数から採算を計算する
体験レッスンを無料にすると、通常料金で通う人が何人いれば費用を回収できるのでしょうか。入会人数に加えて、その後に実施するレッスンの回数も数える必要があります。無料体験への申込みが増えても、準備と指導に使う時間は増えるためです。
まず体験1回の負担を求め、同じ体験参加者から生じた通常レッスンの残額と合算します。観察する期間を決めて、入会しただけの人と、実際に通常レッスンを受けた人を区別しましょう。
以下は1対1のレッスンを想定した架空の例です。相場・推奨価格・入会率や継続率の予測ではありません。自分の時間の評価額を差し引いた「固定費控除前の残額」を比較します。月間の事業利益、現金収支、税引後の手取りとは異なります。
1.体験1回に使う費用と時間を数える
無料・有料の体験を設ける実例として、ラッドミュージックスクールの体験レッスン案内があります。ただしコースにより内容や回数が異なるため、料金だけで同じ条件の比較はできません。以下はこの教室の実績や料金を使った試算ではありません。参照日:2026年10月20日。
比較のため、体験も通常レッスンも次の費用・時間がかかると仮定します。グループ指導の場合は、講師の時間を参加人数分重ねて計上せず、1開催と1人の費用を分けてください。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 体験参加者 | 10人が、それぞれ体験を1回実施 |
| 体験料金 | 無料、または1回2,000円 |
| 通常料金 | 1回6,000円 |
| 材料などの実費 | 実施1回につき500円 |
| 指導・準備・片付け時間 | 実施1回につき合計1.5時間 |
| 自分の時間の評価額 | 1時間1,500円(1回2,250円) |
| 決済手数料 | 受け取る料金の3%、定額手数料なし |
1回の残額は「料金×(1−手数料率)−実費−時間の評価額」です。
- 無料体験:0−500−2,250=−2,750円。
- 2,000円の体験:2,000×0.97−500−2,250=−810円。
- 通常レッスン:6,000×0.97−500−2,250=3,070円。
体験10人分では、無料なら27,500円、有料なら8,100円の負担になります。有料体験でも、この条件では体験だけで費用を回収できません。時間の評価額は現金で支払う費用とは分けて把握し、同じ人件費を実費にも入れて二重に引かないようにします。
2.通常料金へ移行する人数と、その後の実施回数を分ける
ここでは観察期間を一つ決め、その期間内に、通常料金へ移行した人がそれぞれ追加で3回の通常レッスンを実施すると仮定します。1人分の通常レッスンの残額は3,070×3=9,210円です。
| 通常料金へ移行した人数 | 無料体験の場合 | 2,000円体験の場合 |
|---|---|---|
| 0人 | −27,500円 | −8,100円 |
| 1人・通常3回 | −18,290円 | 1,110円 |
| 3人・通常合計9回 | 130円 | 19,530円 |
| 5人・通常合計15回 | 18,550円 | 37,950円 |
計算式は「体験10回の残額+通常レッスンの実施合計回数×3,070円」です。人によって継続回数が違う場合は、人数×3回を使わず、実際に完了した通常レッスンを合計してください。期間の途中で入会した人を、十分な観察期間のある人とそのまま比較しないことも大切です。
固定費、広告費、税金、入会金、通常レッスンの追加割引、キャンセル・返金は含めていません。追加の集客費用がある場合は、この合計からさらに差し引きます。前払いされた未実施分の売上と、実施済みレッスンの採算も分けて管理してください。
3.「何%入会すればよいか」は継続回数で変わる
無料体験10人分の27,500円を回収するには、1人が通常レッスンを3回実施する条件なら、27,500÷9,210を切り上げて3人(10人中30%)が必要です。そのときの残額は130円なので、事業全体の黒字化を意味しません。
同じ通常料金でも、1人が通常レッスンを1回しか実施しないなら、27,500÷3,070を切り上げて9人(90%)が必要です。2,000円体験で、その後に通常レッスンを3回実施する条件なら、1人(10%)で体験の負担を回収する計算になります。
これらの割合は計算上の境目で、実際に達成できる入会率の目安ではありません。体験を有料にしたときに申込人数や継続回数がどう変わるかは、別に確かめる必要があります。
4.体験と継続の両方を予約枠へ入れる
無料体験10回と、3人が追加で3回ずつ受ける通常レッスンを同じ観察期間に実施するなら、合計19回。準備を含めて19×1.5=28.5時間が必要です。体験だけでも15時間を使います。
広報、予約調整、会計などの時間はこの28.5時間に含めていません。既存のお客様の予約も差し引いて、体験後に通常枠を用意できるか確認します。枠の考え方は予約枠の稼働率と目標利益の解説、取り消しがある場合はキャンセルによる利益減少の解説も参考になります。
5.体験だけで費用を回収する料金を試算する
今回の実費500円と時間の評価額2,250円を、手数料3%の体験1回で回収する料金は、2,750÷0.97=約2,835.05円。1円単位で切り上げると2,836円です。これは固定費を含まない費用回収の境目で、販売すべき価格の提案ではありません。
無料の価格逆算ツールでは、目標月間利益0円、月間固定費0円、想定月間販売数1件、1件あたり変動費2,750円、定額手数料0円、販売手数料率3%を入力すると再現できます。今回は時間の評価額を変動費へ手動で含めています。この入力では月の採算や、体験後の継続は計算していません。
6.自分の教室では何を記録するか
- 体験実施日・料金・実施回数・実費・準備を含む時間。
- 体験参加者のうち通常料金へ移行した人数と、観察期間内に完了した通常レッスンの合計回数。
- 広告などの追加費用、キャンセル・返金、体験と通常のために確保した予約枠。
まず一つの体験条件で記録をそろえ、期間や内容が異なる募集を混ぜずに比較します。記録が少ない段階で、入会率や継続率を将来の確定値として扱わないようにしましょう。
提供時間と費用を含む単独サービスの料金試算は、サービス業の料金の決め方で整理できます。継続して条件を保存したい場合は、サービス業向けExcelのStandard/Pro比較をご覧ください。Standardは1種類、Proは最大6サービスの採算比較に対応します。どちらも入会率・継続率の予測や、この記事の体験参加者単位の合算を自動で行う商品ではありません。