価格と利益の計算室|出張・訪問の採算
出張レッスン・訪問サービスの料金設定|交通費と移動時間を含めて計算する
「遠方のお客様には、交通費だけを追加すればよいだろうか」。個人レッスンや訪問サービスでは、現地での提供時間が同じでも、往復の移動が長くなるほど1件に使う時間は増えます。その間に別の予約を受けられないことも、料金を考える材料になります。
最初に、現金で出ていく交通費と、自分の移動時間の評価額を分けましょう。そのうえで、1件から残る金額と、月に受けられる件数を照合します。
以下は、1人で1件ずつ訪問し、毎回拠点から往復する架空の試算です。相場・推奨価格・需要予測ではありません。予約はすべて実施し、キャンセル、税金、追加集客費用は含めません。自分の時間の評価額を引いた「参考利益」は、現金収支や税引後の手取りとは異なります。
1.交通費と、移動に使う時間を分ける
- 実費:電車代、ガソリン代、駐車場代、高速料金、会場費など。
- 確保する時間:現地での提供、準備・片付け、往復の移動、必要な待機時間。
車の維持費や道具の費用を月間固定費に含めている場合は、1件の費用に同じ金額を重ねないようにします。交通費をお客様へ別請求する場合も、請求した金額と実際に負担する費用を両方整理してください。
実際の案内例として、HAZAMA SPORTSの料金ページでは移動時間などを考慮した出張費に言及し、フレアプラスの出張レッスン案内では往復の移動時間と実費交通費を出張費の目安に含めています。料金の組み立て方の例であり、以下の計算に両者の料金を使用したものではありません。参照日:2026年10月20日。
2.同じ8,000円でも、近場と遠方では残額が違う
現地での提供は1時間、準備・片付けは合計30分。自分の時間を1時間1,500円と評価し、移動条件だけを変えます。表示の料金は、お客様から受け取る合計額です。
| 項目 | 近場 | 遠方 |
|---|---|---|
| 受け取る料金の合計 | 8,000円 | 8,000円 |
| 材料等の変動費 | 500円 | 500円 |
| 往復の交通費 | 500円 | 1,500円 |
| 合計料金にかかる手数料率 | 3% | 3% |
| 現地での提供+準備・片付け | 1.5時間 | 1.5時間 |
| 往復の移動時間 | 0.5時間 | 1.5時間 |
| 1件で確保する時間の合計 | 2時間 | 3時間 |
| 自分の時間の評価額 | 3,000円 | 4,500円 |
| 1件の残額(固定費控除前) | 3,760円 | 1,260円 |
1件の残額=合計料金×(1−手数料率)−材料等の変動費−交通費−時間の評価額
近場は8,000×0.97−500−500−3,000=3,760円。遠方は8,000×0.97−500−1,500−4,500=1,260円です。交通費の差1,000円と、時間評価額の差1,500円を合わせ、遠方では2,500円少なく残ります。
遠方だけ交通費の差1,000円を料金に加えて9,000円にしても、残額は2,230円です。近場の3,760円と同じにはなりません。この例では、追加請求した金額にも3%の手数料がかかります。交通費部分の決済方法や手数料条件が異なる場合は、分けて計算してください。
3.近場と同じ残額を確保する合計料金を求める
遠方でも、1件あたり3,760円を固定費控除前に残したい場合の式です。
必要な合計料金=(残したい金額+材料費+交通費+時間の評価額)÷(1−手数料率)
(3,760+500+1,500+4,500)÷0.97=約10,577.32円。1円単位で下回らない合計料金は10,578円です。残額は3,760.66円になります。
これは、入力した条件で同じ残額を確保するための計算上の金額です。その価格で依頼が得られるか、サービスの価値に合うかは別に検討します。手数料率100%では、この式で料金を求められません。
4.月に受けられる件数も、移動込みで数える
休憩や事務時間を除き、1日に予約へ使える時間が6時間、営業日が月20日とします。近場の1件2時間なら1日3件・月60件。遠方の1件3時間なら1日2件・月40件です。
合計料金8,000円・遠方の条件に戻り、月間固定費40,000円、目標参考利益100,000円とすると、必要な実施件数は(100,000+40,000)÷1,260を切り上げて112件。月40件の枠には収まりません。40件すべて実施しても、参考利益は1,260×40−40,000=10,400円です。
1件あたりが黒字でも、受けられる件数が少なければ月の目標へ届かないことがあります。日ごとの移動経路や時間帯も確認してください。複数のお客様を続けて回る場合は、毎回拠点へ戻る計算にせず、実際の経路に沿って移動時間と交通費を配分します。
日ごとの端数やキャンセルを含む枠の考え方は、必要予約数と稼働率の解説で確認できます。
5.無料ツールで、月の目標から料金を試算する
先ほどの「近場と同じ1件の残額」とは目的を変え、遠方の条件で月40件実施し、月100,000円の参考利益を目指す料金を求めます。無料の販売価格逆算ツールへ、次の値を入力できます。
| 入力項目 | 入力値 |
|---|---|
| 目標月間利益 | 100,000円 |
| 月間固定費 | 40,000円 |
| 想定月間販売数 | 40件(すべて実施の仮定) |
| 1件あたり変動費 | 6,500円=材料500円+交通費1,500円+時間評価額4,500円 |
| 1件あたり定額手数料 | 0円 |
| 販売手数料率 | 3% |
計算上の必要料金は10,310円、その料金で40件実施した場合の月間参考利益は100,028円です。時間の評価額を変動費へ合算するのは、この無料ツールで同じ条件を再現するためです。別の費用へ同じ時間評価額を重ねないようにします。
無料の逆算ツールには、移動時間、予約枠、キャンセル率の専用入力欄はありません。受けられる40件は自分で数えた条件であり、自動で見積もられた件数ではありません。
6.エリアや条件を変えて、料金案を比較する
次に比較する条件は、対応エリアを絞る、訪問日をまとめる、移動の少ない提供方法へ変える、料金を見直す、といった案です。どの案でも、交通費と拘束時間を実際の条件へ置き換えて計算します。
サービス業向けExcelでは、交通費を実施1件あたりの変動費へ含め、提供時間に移動・準備を含めて整理する方法があります。時間の評価額はExcel側で計算するため、変動費へ再度加算しません。移動時間・交通費の専用欄や、経路の自動計算はありません。
1種類のサービスはStandard、複数サービスやエリア別の条件を最大6行で並べる場合はProの機能を確認できます。同じ月間固定費を複数行で重複して引かないよう配分し、「料金設定」と「サービス別比較」は独立した試算として使います。
この計算は、実施した予約で費用と時間が発生するモデルです。キャンセル前に移動・準備を済ませた負担、キャンセル料、空き枠の再販売は自動計算しません。そうした条件はキャンセルによる利益への影響の解説で別に整理してください。
料金設定の基本から整理したい場合は、サービス業の料金の決め方、共通固定費の配分はサービス別の採算比較をご覧ください。